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アスベスト調査に必要な資格とは?法改正施行前にすべき対応を解説
2023年02月24日
2020(令和2)年に改正大気汚染防止法が公布されました。
法改正にともない、建築物を解体・改修する際にアスベストが含まれているのかを調べるのに資格が必要になるのか、知りたい方が多いでしょう。
この記事では、次の内容をお伝えします。
● 資格が必要かどうか
● どのような資格を取得したらいいのか
● 法改正施行にどう備えるべきか
法改正の内容や、早めに確認しておきたい点について解説します。
アスベストの調査は有資格者のみに規制強化へ
現在、アスベストが建築物に含まれているのか調べるのに特別な資格は必要ありません。
しかし、改正大気汚染防止法では指定された有資格者による調査が義務化されます。
そこでどのような有害性があり、なぜ含有の有無を調べなければいけないのかについて解説します。
参照:「環境省 石綿飛散防止等に係る普及啓発・広報資料 石綿飛散防止チラシ」
有害性とは
アスベストとは、石綿(いしわた)とも呼ばれる天然の繊維状の鉱物です。
耐久性の高さから1960年代を中心に、建築物の天井裏や屋根材に断熱・耐火などを目的として多く使用されてきました。
しかし、深刻な健康被害が判明してから徐々に規制されるようになり、2006(平成18)年には製造・輸入・譲渡・提供・使用が全面的に禁止されました。
長期間にわたった吸入により、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫、肺がんになるリスクがあるとWHOにより報告されています。
これらの健康被害は、15年から50年の長い潜伏期間後に発病するケースが多いといわれています。
含有の有無を調べる理由とは
アスベストの繊維は微細なため、必要な対策をしないまま建築物の解体や改修工事をすると、周囲に飛散してしまいます。
作業員や近隣住民は、飛散したアスベストを吸入し健康被害を受けないよう、事前に調査が必要です。
アスベストが含まれていた場合には、除去や封じ込めなどの工程を経たうえで、工事に着手しなければなりません。
アスベストの有無を調べるのに資格が必要になった背景
建築物のアスベスト調査が必要になった背景には、2020(令和2)年の大気汚染防止法の改正があります。
2021(令和3)年から2023(令和5)年にかけて順次施行される改正内容について解説します。
大気汚染防止法の改正
大気汚染防止法では、大気中にアスベストが飛散しないよう建築物の解体、改造、補修作業を行う際の基準について定めています。
2020(令和2)年には改正法が公布され、順次施行されています。
改正大気汚染防止法の施行
年月 | 施行内容 |
2021(令和3)年4月 | 調査方法の法定化 |
2022(令和4)年4月 | 都道府県などへの調査結果報告の義務化 |
2023(令和5)年10月 | 有資格者による調査の義務化 |
参照:「環境省 石綿飛散防止等に係る普及啓発・広報資料 石綿飛散防止チラシ」
2023年10月から有資格者による調査が義務化
これまで建築物の解体・改修工事の前のアスベスト調査には、資格は必須とされていませんでした。
しかし、2023(令和5)年10月からは、指定された有資格者による調査が義務づけられます。
アスベストの含有の有無を調べられる資格3選!
次の資格に該当する人材による調査が義務づけられます。
● 建築物石綿含有建材調査者
● (一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている方しかし、義務づけ前でも可能な限り必要な知識を有する者による調査が望ましいとされています。
アスベストの調査ができる資格
資格 | 2023年10月以降の調査 |
建築物石綿含有建材調査者 | 可能 |
石綿作業主任者 | 実務経験なしの場合、建築物石綿含有建材調査者講習の受講資格となる |
アスベスト診断士 | (一社)日本アスベスト調査診断協会に入会・研修受講で可能 |
その1.建築物石綿含有建材調査者(国土交通省認定)
建築物の解体・改修時のアスベスト調査を中立的な立場で実施する人材で、国土交通省が認定する公的資格です。
特定・一般・一戸建ての3種類があり、それぞれで施工範囲が異なります。
取得するには、実務経験などの受講資格を満たしたうえで、講習を受講し受講後の試験に合格する必要があります。
その2.石綿作業主任者(厚生労働省認定)
作業者がアスベストを吸入しないよう、作業方法の決定・作業者の指揮・予防装置の点検・保護具の監視を職務とする国家資格です。
建築物石綿含有建材調査者の受講に必要な実務経験がない場合でも、石綿作業主任者の資格があれば講習の受講資格が満たされます。
石綿作業主任者の資格取得には、規定の講習を受講し、受講後の試験に合格する必要があります。
その3.アスベスト診断士(一般社団法人JATI協会認定)
アスベストの使用場所や処理の要否、工事が適正か診断するための知識を持ち、適切にアドバイスができる人材です。
2023(令和5)年9月30日以前に、(一社)日本アスベスト調査診断協会に入会し、規定の研修を受講すれば、2023(令和5)年10月以降も調査が合法的に可能です。
取得するには、所定の資格取得や実務経験などの受講資格を満たしたうえで、養成研修会を受講し、試験に合格する必要があります。
まとめ
大気汚染防止法の改正によって、2023(令和5)年10月からは、建築物にアスベストが含まれているのか、調査が義務づけられました。
これまで資格は必須条件ではありませんでしたが、今後は登録されている方(有資格者)に限られます。
改正が適用される前に早めの対応をしておきましょう。