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店舗の原状回復はどこまで必要?|費用負担を抑える全手順

2025年10月27日

店舗を退去する際に必ず出てくるのが「原状回復工事」。

しかし、どこまで直す必要があるのか、費用は誰が負担するのか、悩む人は多いのではないでしょうか。
契約内容や法律によっても対応は異なるため、知識がなければ余計なコストを支払ってしまうリスクもあります。

本記事では、店舗の原状回復の基本から、借主と貸主それぞれの責任範囲、費用の目安、そして費用を最小限に抑えるための実践手順まで詳しく解説します。

店舗の原状回復はどこまで必要?|費用負担を抑える全手順

店舗の原状回復はどこまで必要?|費用負担を抑える方法

原状回復の基本

店舗の退去時に必ず問題になるのが「原状回復」です。
原状回復とは、借りた物件を入居時の状態に戻して返すことを指します。

ただし「入居時と全く同じに戻す」わけではなく、法律上や契約上で求められる範囲での回復工事が基本となります。
例えば、通常使用で発生する経年劣化や自然摩耗については、借主の負担ではなく貸主が引き受けるケースが多いのが実情です。

一方、借主が設置した造作や内装変更については撤去が必要であり、その費用は原則として借主が負担します。

借主の責任

借主が負担するのは、主に自らの使用により発生した損耗や改装に関わる部分です。
例えば、壁に取り付けた棚の穴、店舗用に設置した厨房機器の排気口、床材の貼り替えなどは借主負担となります。

また、賃貸契約で「スケルトン渡し・スケルトン返し」が明記されている場合は、借主がすべての内装を撤去し、コンクリートむき出しの状態に戻す義務を負うことになります。
このように契約条件によって負担範囲が大きく変わるため、事前確認が重要です。

貸主の責任

一方、貸主が負担するのは、建物そのものの経年劣化や自然な損耗に関わる部分です。
例えば、壁紙の日焼け、空調設備の老朽化、給排水設備の寿命などは貸主側の責任とされるケースが一般的です。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、通常使用による劣化は借主に負担させるべきではないと明示されています。
したがって、借主としては「自分がつけた損耗」と「自然に発生する劣化」をしっかり切り分けることで、不要な費用負担を避けられます。

契約書の確認ポイント

原状回復の範囲を判断するうえで最も重要なのは、賃貸契約書の内容です。
特に以下の点を確認しておきましょう。
スケルトン返しの有無や内装撤去の範囲が明確に書かれているか 。

造作の扱いや造作を残してよいのか、撤去義務があるのか ?特約条項に原状回復に関する特別な条件があるか。
退去時の立ち合い方法は貸主や管理会社との確認手順など。
これらを事前に把握しておくことで、退去時にトラブルになるリスクを大幅に減らすことができます。

費用の目安

原状回復費用は物件の広さや業態によって大きく異なります。
一般的な飲食店では、1坪あたり5万〜15万円程度**が目安とされ、30坪の店舗であれば150万円〜450万円ほどかかる計算です。

物販店やオフィスの場合は比較的安くなるケースが多く、1坪あたり3万〜8万円程度**で済むこともあります。
ただし、造作が多い店舗や特殊な設備を設置していた場合は費用が跳ね上がるため、早めの見積もり取得が重要です。

費用を抑えるための実践手順

現状の把握

まずは店舗の現状を正確に把握することが、費用削減の第一歩です。
どの部分が借主負担になるのかをチェックし、写真や動画で記録を残しておきましょう。

特に「入居時から存在していた傷や劣化」については証拠を残すことで、不当な請求を避けられます。
また、契約書と照らし合わせて「どこまで回復が必要なのか」を整理しておくことが重要です。

見積りの取り方

次に複数の業者から見積もりを取りましょう。
相場感をつかむためには最低でも3社から見積もりを依頼するのがおすすめです。

その際、単に金額だけを見るのではなく、内訳が明確に示されているかを確認してください。
「撤去工事一式」といった曖昧な表記ではなく、解体、廃材処分、復旧などの項目が分けられているかがポイントです。

透明性の高い業者を選ぶことで、後から追加費用を請求されるリスクを減らせます。

業者選びで失敗しない方法

業者選びでは「安さ」だけで判断するのは危険です。
安すぎる見積もりを出す業者は、後から追加請求をしてくるケースも少なくありません。

選定のポイントは以下の通りです。

– 過去の施工実績が豊富であること

– 契約前に現地調査をしてくれること

– 内訳が明確で追加費用の発生条件が説明されていること

– 契約書や保証内容がしっかりしていること。

また、貸主側が指定する業者を利用しなければならない場合もあるため、事前に確認しておくことも大切です。

まとめ|原状回復の要点チェック

店舗の原状回復は「どこまで必要か」を正しく理解することで、無駄な費用を大幅に抑えることが可能です。
借主が負担すべき範囲と貸主の責任範囲を切り分け、契約書をしっかり確認することが基本です。

そのうえで現状を把握し、複数の業者から見積もりを取り、信頼できる業者を選ぶことで安心して退去を進められます。
費用を抑えるポイントは「情報と準備」にあります。

契約書の特約やスケルトン返しの条件を早めに確認し、余裕を持って撤去計画を立てることが重要です。
これらを押さえておけば、予想外の出費を避け、スムーズに次のステップへ進むことができるでしょう。